Parallel Career

会社員から、
プロの作曲家・アーティストへ。

働きながら音楽をやることは、もう特別なことではありません

職業作家を目指している方のうち、多くが、音楽とは別の仕事をしながら楽曲コンペに参加しています。音楽だけで生計を立てている人は、いつの時代も一握りです。これは今に始まったことではありません。

私自身、作家事務所に入りたての頃は、アルバイトで生計を立てながら楽曲コンペに参加していました。当時は「いつか音楽一本にする」ことが前提で、それまでの期間をどう耐えるか、という感覚だったように思います。

ただ、いまは事情が変わってきました。仕事を続けたまま音楽で実績をつくり、その先の身の振り方を選ぶ。あるいは、仕事も音楽も両方を持ち続ける。そういう進み方が、現実的な選択肢になっています。


この10年で、何が変わったのか

制作環境が、誰の手にも届くようになった

2010年代の後半から、音楽制作の環境は大きく変わりました。DTMがコンシューマー向けに普及し、機材やソフトの価格も下がりました。かつては専用のスタジオと高価な機材が必要だったことが、コンピュータ1台でできるようになった。この変化が、すべての起点だと思っています。

業界の側も、開かれてきた

楽曲コンペは、以前はかなりクローズドなものでした。それが作家事務所の増加とコライトの一般化(複数人で楽曲を制作する)とともに敷居が下がり、比較的多くの方が参加できるようになりました。

同時に、テレビやメディアが作曲家という職業に注目するようになり、「裏方」というイメージも変わってきています。作曲家が表に出て語る機会が増えたことで、目指す対象として認識されやすくなりました。

歌い手がいなくても、作品が完成する

ボーカロイド、初音ミク、Synthesizer V といった技術の登場も大きな変化です。歌ってくれる人を探さなくても、自分の曲を最後まで形にできる。2020年以降、このハードルはさらに下がり続けています。

「黄金ルート」は、ひとつではなくなった

かつては、子どもの頃から音楽をやり、音楽大学や専門学校に進み、アルバイトをしながらプロを目指す——これが王道でした。音楽にすべてを捧げることが前提だった、と言ってもいいと思います。

いまは、社会人になってから音楽活動を始め、実績ができた段階で音楽家として活動する方がいます。会社員としてのキャリアを残したまま、並行して活動を続ける方もいます。自分で会社を経営されている方は、時間の調整がつきやすいという利点を活かして活動されています。

道はひとつではなくなりました。


音楽で対価を得る形は、ひとつではありません

ひとくちに「音楽で仕事をする」といっても、その形はいくつかに分かれます。自分がどこを目指しているのかによって、身につけるべき技術も変わってきます。

1アーティスト
2職業作家(楽曲コンペ)
3BGM制作
4劇伴(映像音楽)

1アーティスト

自分の名前で演奏や歌、作曲を行い、自分自身をプロデュースして世に出していく形です。自分で楽曲を作るかどうかで、シンガーソングライターと呼ばれるか、シンガーとして活動するかが分かれます。優れた歌声があれば、曲を書く人とマッチングしてデビューする道もあります。

アーティストの利点は、自分自身が商品であるため、多くの決定を自分で行えることです。メジャーレーベルと契約すればレーベル側の事情も入ってきますので、すべてを自分で判断できるわけではありませんが、ある程度のイニシアチブは持てます。

ただし近年は、アーティストが他者への楽曲提供や、主題歌・タイアップを担当することも増えました。自分の好きな曲だけを書いていればいい時代ではなくなってきている。誰かのために書く力も、あわせて必要になっています。

そのうえで、MITCではシンガーソングライターという形をお勧めしています。自分で楽曲を作れるということは、自分自身をプロデュースできるということだからです。

歌一本で活動する場合、良い楽曲と出会えなければ、それだけで時間が過ぎていきます。曲が来るのを待つしかない状況で、そのまま埋もれていった方を、私は何人も見てきました。

自分で楽曲を書けるかどうかは、活動の戦略を立てるうえで決定的に重要です。 待つ側にいるのか、自分で動かせる側にいるのか。その差は、年を重ねるほど大きくなっていきます。

2職業作家(楽曲コンペ)

いわゆる作曲家です。事務所を通じて楽曲コンペに参加し、採用されることで自分の曲が世に出ていきます。

コンペに参加するアーティストに合わせて、自分のアイデアや提案を楽曲に盛り込み、プロダクションにアピールする。この作業が必要になります。つまり、楽曲を作れることは、もはや当たり前のスキルです。

そのうえで問われるのは、「自分ならこう提案する」という提案力と分析力です。そのアーティストがいま何を求めているのか、世の中がどこへ向かっているのか。それを読み取る力が求められます。

3BGM制作

日本ではAudioStockが知られています。テーマに沿って楽曲を制作し、購入した方がそれぞれの動画や目的に合わせて使っていく仕組みです。

基本は映像に使われる音楽になりますので、歌ものとは作り方が異なります。大きく展開させるのではなく、映像の後ろで流れていて違和感がないことが求められる。これはこれで、別種の音楽理論やテクニックが必要になる領域です。

4劇伴(映像音楽)

ドラマや映画などの映像に、音楽をつけていく仕事です。

かつては音楽大学を出た方が中心のフィールドでした。しかし現在は、バンドが音楽を担当したり、ダンスミュージック出身の人が劇伴を手がけたりと、多種多様なクリエイターが活躍する場になっています。

ただし、制作費が大きい関係上、既に実績のある方でなければ、事務所に所属して活動していくことが基本になります。

映像に音楽をつけることそのものに惹かれる方、音で感情を表現することに関心がある方にとって、選択肢は着実に広がっています。


社会人であることは、不利ではありません

「音楽だけをやってきた人には勝てないのではないか」

これは、必ず出てくる不安だと思います。私の答えは、そうとは限らない、です。

時間をつくれる環境は、以前より整っている

昔は、アルバイトをしながら生活を賭けて音楽に臨むのが当たり前でした。ですがコロナ禍以降、リモートワークが増えました。働き方も、会社員だけでなく、フリーランスのエンジニアやコンサルタントなど、多様になっています。自分の時間を自分で調整できる働き方が、以前より現実的になりました。

労働基準法の改善もあり、極端な長時間労働も以前と比べれば減ってきていると感じます。数十年前と比べれば、自分の時間はつくりやすくなっている。私はそう見ています。

音楽だけをやってきた人にも、弱点はある

そのうえで申し上げたいのは、音楽だけに向き合ってきた人にも、実は弱点があるということです。それは、社会人経験がないことです。

アーティストであれば、これは大きな問題にはなりません。しかし職業作家の世界は、基本的にB2Bです。クライアントとのやり取りにおけるマナー、そして相手が望んでいることを汲み取る力。これらがかなり重要になってきます。

残念ながら、ここが足りないことで伸び悩んでいる方は少なくありません。逆に、活躍されている方は、この部分に長けていることが多いというのが私の実感です。

必要なのは、2本の柱

プロとしての活動
音楽の力
音楽一筋の方すでにある
社会人の方これから
社会人としての
対応力
音楽一筋の方これから
社会人の方すでにある
スタート地点が違うだけで、どちらからでもたどり着ける。

プロとして活動していくには、「音楽の力」と「社会人としての対応力」、この2つの柱が必要だと考えています。

音楽一筋でやってきた方は、音楽の力を持っている。けれど対応力はこれから身につけることになります。

一方、社会人として働いてきた方は、取引先とのやり取りも、要望を汲み取ることも、日々の仕事の中で身につけてきています。その力は、すでに備わっている。あとは音楽の力をつけていけばいい。

スタート地点が違うだけで、どちらからでもたどり着ける。私はそう思っています。

補い合うことと、掛け合わせることは違う

ここでひとつ、触れておきたいことがあります。コライトについてです。

海外のコライトキャンプを見ていて感じるのは、そこに集まっているのは全員、ひとりでも曲を完成させられる人か、何か強烈な個性を持っている人たちだけだということです。作曲もアレンジもトラックメイクも自分ひとりで最後まで持っていける人。あるいは、その人にしか出せない個性や、その人にしか書けないメロディを持っている人。そういう人間が集まり、それぞれの引き出しを持ち寄る。だからこそ、ひとりでは決してたどり着けない場所まで曲が飛んでいく。

本来のコライトとは、そういうものだと思っています。できない部分を埋め合うのではなく、できる者同士が掛け合わさることで化学反応が起きる。実力のある人同士が組んだときの相乗効果は、確かに大きい。

一方、日本では少し違う形でコライトが語られている印象があります。

勧められる理由のひとつは、それぞれができない部分を補うことで、プロとしてのキャリアを始められる確率が上がるからでしょう。実際、そういう形でスタートする方は少なくありません。

ただ、私の見るかぎり、そのほとんどは続いていません。

理由のひとつは、収入の問題です。ただでさえ限られた印税を複数人で分割することになるため、収入として安定するまでにかなりの時間がかかります。

もうひとつは、制作の現場で起きることです。複数人で曲を作っていく以上、音楽的な意思疎通ができなかったり、作業のスピードが追いつかなかったりすると、次第に声がかからなくなります。事務所などのサポートで組み合わせを用意してもらえなければ、誰も一緒にやってくれない。そうなれば、居場所そのものがなくなります。

チームの中にひとりでも力の足りない人が入れば、制作は滞ります。補い合うつもりが、結果として足を引っ張り合う形になってしまう。

私はコライトを否定しません。むしろ、力のある者同士が組んだときの可能性は大きいと思っています。だからこそ、その前にひとりで最後まで作り切れる力を持っておくこと。順番はそちらが先です。


ただし、時間だけは取り戻せません

ここまで社会人の強みをお話ししてきましたが、不利な点もはっきりしています。時間です。

社会人は、時間を売って対価をいただいて働いています。つまり、自由に使える時間が構造的に限られている。ここは、どうにもならない現実です。

音楽の力をつけていく方法は、いくつもあります。自分でいろいろ試しながら、我流で練習を重ねて上達していく方も多いと思います。ただ、働きながらそれをやるのは、かなり過酷です。

音楽理論や技術がなくても、音楽は作れます。ただ、それは非常に遠回りになります。

だからこそ私は、社会人であるならば、なるべく誰かに教わるという形で、時間を無駄にしない環境をつくることをお勧めしています。限られた時間の中で活動しなければならない人ほど、習う環境を選ぶ意味がある。そう考えています。


AIに、仕事を奪われないか

これから音楽を学ぼうとするとき、AIの存在が気になる方は多いと思います。いま投資して、数年後に意味がなくなっていないか。当然の心配だと思います。

AIは今後、多くの働き方を変えていくでしょう。私たちの作曲の世界にも、AIの技術はすでに入ってきています。

ただ、著作権法上、著作物は人間の思想または感情を創作的に表現したものとされています。この考え方がある限り、楽曲制作のすべてがAIに置き換わるということは、現時点では考えにくいと私は見ています。

むしろ、AIを道具として使いこなせるかどうかが問われる時代になると思います。そのときに必要になるのは、出てきた音を判断する力です。何が良くて何が足りないのかを聴き分けられなければ、道具は使いこなせません。その判断の土台になるのが、音楽理論であり、蓄積された経験です。

技術が変わっても、判断する力は残ります。 だからこそ、いま基礎を積む意味があると考えています。


自分の音楽で、対価を得るということ

自分で発信することによって対価を得る。それは、目指すべき価値のあることだと私は考えています。

会社員から、プロの作曲家やアーティストへ。もう珍しい話ではありません。ただし、片手間でたどり着ける道でもありません。

限られた時間をどう使うか。そこにこそ、学ぶ環境の意味があると思っています。

MITC ACADEMY 主宰 谷 正太

まずは、今の状態をお聞かせください。

どこから学び始めるのがいいかは、人によって違います。今つくっている曲や、これまでの学び方をうかがったうえで、ご提案します。

無理な勧誘は一切ありません。

LINEで無料学習相談